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| 2千年を超える歴史の重積を背に 人生を謳歌する庶民の逞しさが稀有で多彩な食文化を生みました。 ローマ、紀元前753年の建国から延々と続く永遠の都。世界各国からやってくる観光客は、コロッセオからフォロ・ロマーノ、トレヴィの泉、真実の口などまわりきれないほどの名所を驚嘆のため息をつきながら巡ります。でも、ローマの素顔を見たくなったら川を越えてトラステーヴェレに足をのばしてみましょう。そこは「ローマの心」と呼ばれ、良くも悪しくもローマ庶民のエネルギーが溢れている所です。2千年以上もの歴史を経たローマ料理にはいくつかの流れがあります。いまでも残っている「イノシシの甘酢風味」などを作り出した古代ローマ料理、紀元前からローマに住みついて「ユダヤ風揚げカルチョーフィ」を残したユダヤ人の料理、アマトリーチェ風ブカティーニやカルボナーラのように遠方からきた「地方料理」、そして最もローマらしいといわれる「仔羊のスコッタディート」に代表される羊飼いの料理と「牛テールの煮込みコーダ・アッラ・ヴァッチナーラ」や「ローマ風のトリッパ」などの内臓料理の傑作を生んだマッタトイオ(食肉解体場)の料理です。トラステーヴェレではこれらの料理がメニューを彩り、他の土地では見ることの出来ないモザイクのような複雑さと奥深さを表しています。 そしてそこに共通するのは「エコノミーな食材」。肉類ならば第一に羊、それも母乳しか飲んでいない、ローマ方言でアッバッキョと呼ばれる乳飲み仔羊があげられます。次に豚、そして鶏。高級食材である牛を使った料理は数えるほどしか登場しませんが、尻尾や内臓ならばよく登場します。魚では、昔テーヴェレ川にいたといわれるチョウザメや、カレイのような高級魚はもっぱら貴族料理に使われ、ローマ料理の中ではわずかにイカや小さなエイが登場するくらいです。例外はバッカラ(塩ダラ)。衣をつけて揚げた「フィレット・ディ・バッカラ」は下町の名物となって、歩きながら食べている人をよく見かけます。 ローマ野菜の代表格はなんと言ってもカルチョーフィ。晩秋からいろいろなタイプが出てきますが、最後に真打のように出てくるローマタイプはどっしりと大きく、1本あれば充分に満足のいく料理ができます。また古代ローマ人が大のサラダ好きだったという伝統は今でも続いていて、市場に行けばサラダ用の野菜のオンパレードです。なかでも目立つのはローマ独特の野菜プンタレッラ。カタローニャという苦味のある葉野菜の管状になった花茎をそう呼び、縦に切って水につけ、くるりと巻いたものを、ニンニク、アンチョビ、ワインビネガーとオリーブ油であえて食べます。 6月の中旬の土曜日からトラステーヴェレ大通りで大々的に行われる“ノアントリ”の祭りは、まさにこんな庶民の心意気から生まれました。“ノアントリ”とは「僕らと他の人たち」という意味で、「避暑にいけない庶民の僕らと他の人たちで祭りをやって楽しもう」と1ヶ月にわたる大騒ぎの日が続くのです。 そう、ローマ料理には、現実を見据えつつ人生を最大限に楽しもうという、こんなローマっ子の心意気が満ちているようです。 |