2025年度は中期経営計画の総仕上げの年度となります。「トマトの会社から、野菜の会社に」を長期ビジョンとして掲げたのは、「より大きな市場で成長していく、より多くの価値を提供していく」ことへのチャレンジの意思の表れと理解していました。
しかし、それを事業に落とし込んで、カゴメの強みを活かした成長戦略を明確に描くところまでは到達しておらず、これまで試行錯誤を繰り返しながら、成長の方向性を模索してきたというのが正直な印象です。
しかし、グローバルで大きな存在感を示す、トマトの一次加工会社、Ingomarが新たにカゴメグループに加わったことは、グローバルなトマト加工産業においてカゴメグループの影響が強まることになり、改めて、カゴメの強み、存在意義について深く考える良い機会となりました。
持続的に成長できる企業を目指すためには、カゴメの強みを活かした事業戦略が必要です。「野菜の会社」としての説得力のある事業ポートフォリオを具体的に描き、実現していくことでカゴメの成長が伴った「野菜の会社」へ進化することにつながります。また、気候変動や人口問題などグローバルでの食の課題解決が求められる中、カゴメが果たせる役割はますます大きくなっていくと確信しています。これからのカゴメの未来を支える「2035年ビジョン」の方向性と成長戦略を大いに期待するところです。
カゴメは、2014年度から2019年度までの寺田前社長時代に、無理・無駄を極力排除してどのような環境下でも安定的に利益を生み出せる筋肉質な組織になるべく変革を続けました。2020年にそのバトンを引き継いだ山口現社長のもとでカゴメは、コロナ禍や未曽有のコスト高騰に直面するも、鍛えたその経営体質と長年にわたって培われたブランド力を活かし全社一丸となり利益を確保しました。同時に、大型M&Aにより米国トマト他一次加工事業を拡大し、加工用トマト・野菜の品種開発・栽培といった「農」領域の研究開発を加速させ、加えて、多くの新規事業の可能性も探索してきました。
2014年以降現在までの10年間の振り返りの中で経営課題として浮かび上がってきているのが、中長期的に事業を成長させる原動力の強化だと思います。特に注目しているのは、国内加工食品事業をさらに成長させていくための仕組みづくりと、カゴメの強みであるトマトを中心とした野菜と農に関わる様々な知見を活かしグローバルな成長の可能性を探索し挑戦し続ける人的資本の基盤強化です。
私は、社外取締役監査等委員としての5年間の経験を活かし、顧客、従業員、株主、サプライヤー、投資家などマルチステークホルダーの視点をしっかりと取り入れ、カゴメが取り組んでいる2035年までの戦略と戦術の策定とその執行を支えていきたいと思います。
カゴメの取締役会に社外取締役として参加させていただいてから5年間で、取締役会の役割とその中での独立社外取締役の果たすべき役割が明確化されてきました。取締役会では何を議論すべきか、社外取締役はそこで何を期待されているのか、専門家も交えて議論を重ね、社外取締役と執行サイドとの間で認識が統一されてきました。その結果、取締役会では企業価値向上に直結する重要な議案に十分な時間を割いて、多角的な視点から質の高い議論を行う環境が整ったことを実感しています。例えば大規模な海外M&Aについては、社外取締役も現地訪問や専門家のレクチャーなどにより情報格差を解消し、関連部門とのディスカッションの中では、カゴメの目指す方向性における対象事業の持つ意味や資本政策との関係についても十分に議論し、検討することができました。また、独立社外取締役の重要な役割の一つであるアジェンダセッティングに関しては、取締役及び関連部門からの提案に加え、投資家や専門家からの提案も取り入れて取締役会において優先順位を議論し、社外取締役と関連部門のみの自由なディスカッション を経て、執行サイドも含めた取締役全体でさらに深めるための意見交換会が予定されています。今後さらに執行サイドとの議論を深めつつ、ステークホルダー視点をより意識して企業価値向上に貢献することを目指します。
「食を通じて社会課題の解決に取り組み、持続的に成長できる強い企業を目指す」カゴメには、品種開発・栽培・生産(加工)・商品開発・販売までを一気通貫で手掛ける強みがあります。加えて、サステナビリティやCSRへの取り組みに関しても真摯に向き合う企業風土を持つ会社です。
昨今の気候変動やグローバル市場環境など、カゴメを取り巻く事業環境は絶えず変化を続けており、変化を先取りする経営戦略やガバナンスが不可欠となっています。
今後の成長という観点では、「トマトの会社から、野菜の会社に」というビジョンのもと、従来の強みであるファンベースドマーケティングによる国内顧客とのエンゲージメント強化に加え、国際事業において、市場ニーズに基づく商品開発や安定したサプライチェーンの構築を通じ、グローバルフードサービスや加工食品メーカーとのビジネス拡大が欠かせません。加えて、多様性を持つグローバル人材を活性化し、イノベーションを創出する組織マネジメント、人材戦略を含めたダイバーシティ&インクルージョンの推進も大変重要です。
長年にわたる海外駐在を含めたグローバルビジネスへの知見と、組織マネジメントの経験を活かし、多様なステークホルダーの皆様との交流を深めながら、カゴメの持続的な成長と企業価値の向上に貢献していきたいと思います。